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アンダンテ靴工房は東急東横線自由が丘駅から徒歩10分、東急大井町線緑ヶ丘駅から徒歩5分、東急目黒線奥沢駅から徒歩7分のところにあります。
靴作り教室とオーダー靴の工房です。

タグ:扁平足


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Iさんの1足目、ネイビーに染められたヌメ革で作ったオペラパンプスの完成です。甲にあしらった飾りがいい雰囲気です。
Iさんの足はいわゆる扁平足で、縦アーチが潰れて土踏まずが無くなっている状態です。後ろから見ると、かかとが内側に傾いているのがよく分かります。こういう場合、少し中底にパッドを敷いてアーチを持ち上げたいところですが、あまりやると違和感が強くなったり、履き口が広がってきたりするので、加減が難しいし、アーチが持ち上がると、その分、足長が短くなるので、予めそれを見越した木型にしておかないと、うまくいきません。とにかく、一筋縄ではいかないのですが、試行錯誤に迫られるので、いい経験にはなります。
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足が細く、薄いため、今まで靴選びに満足したことがないとおっしゃる、お客さんのFさん。
普段はやむを得ずスニーカーを履いているそうですが、スニーカーも他の靴同様、足に合っていなければフィットするはずもなく、いつもブカブカの状態で履いているとのことです。
この日、履いて来られていたブーツもAワイズの細身なものでしたが、全くフィットしていませんでした。(日本人はEワイズが多いと言われています。真偽のほどは別として。)
Fさんの足、右足のアーチが落ちており、開張足と扁平足が併発し、外反母趾の傾向が見られました。
故に足幅は、見た目それほど細くは見えないように思いますが、厚みが非常に薄く、特に甲の低さが目立っていました。
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Fさん、パンプスを履いて、履き口に隙間がないのは今回が初めてだとおっしゃってました。
これからはちゃんと足に合った靴で、今まで出来なかったおしゃれを楽しんでいただきたいと思います。
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甲回りが薄く細い足は、標準的な靴を履いた時、スペースにゆとりがあり過ぎて、中足骨が広がっていきます。これにより開張足になり、さらに他の症状を併発するようになります。
中足骨のぐるりをしっかりホールドすることは靴選びで最も重要なポイントの一つです。
このポイントを満たさない靴選びを続けていると、足はどんどん悪循環に陥ってしまいます。

パンプスでは甲がない分、しっかり側面から中足骨を支えてあげることが必要です。
街中で女性の足下を見ると、履き口が隙間だらけのパンプスを履いていたりしますが、あれは良くありませんね。足の骨は変形し易く、状況に左右され易いものです。しっかりした認識をもって、長時間、悪条件下に足を置かない配慮が欲しいものです。 

ちなみに、この日、Fさんが履いてこられたAワイズのブーツも少し手を加えて調節し、甲回りでフィットするようにしました。「足が靴の中で動かない。楽。」と喜んで帰られました。
ブーツの一番効果的な調整方法も後々、紹介していきたいと思います。 

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Kさんの一足目、6センチヒールのワニ革型押しのパンプスです。
今回使用したこの革、とにかく硬くて、伸びなくて、随所で苦労しました。
しかし、そういう革は一旦出来上がってしまうと、型崩れしにくく、たいへん長持ちします。
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Kさんの足はアーチが崩れたいわゆる扁平足で、踵が大きく外反していて大げさに言えば「く」の字の形をしています。既成の靴では靴の真ん中寄りの位置に第一趾(親指)がきている状態で、その他の指は靴の内部で外側の革に押し当てられ、圧迫されており、常に指が痛い状態になっていました。その状態が続くと普段から指を曲げて我慢するクセがついていまい、靴を履かない状態でもその形が定着してしまいます。さらに進むとハンマートゥと呼ばれる症状を引き起こすことになるのです。
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いろいろ難題を抱えた足での一足目ですが、かなりピッタリきていてうまくいったように思います。
まだ直したいところもあるので、さらなるフィット感をめざして2足目に挑戦です。 

一口に外反母趾と言っても程度があります。
軽度のばあい、市販の靴でも革を部分的に伸ばしたりすれば痛みは無くなりますが、かなり進行した状態だと、まず市販の靴はどうしたって痛くて履けません。

今回のお客さんも外反母趾の悩みを抱えて当工房に来られました。
こちらに来られた時も市販の婦人靴が履けなくて、幅広の紳士靴を履かれてのご来店でした。
外反母趾は足のアーチが崩れることで引き起こされるものでもあって、足裏も扁平になっています。
痛いだけでなく、足の本来のクッション機能が失われているため疲れ易いという側面もあります。

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当工房では外反母趾対策として、その骨格形状を木型上で再現し、その形状を靴にした時に、できるだけそう感じさせないような靴の作り方をしています。
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具体的に言うと、吊り込みの際、通常は表面の革と内側の革の間に芯を入れて一緒に吊り込むのですが、今回はまず内側だけを吊り込み、そこで外反母趾特有の起伏ある形状をなだらかにすべく、詰め物をします。そして 形を整え、爪先の芯を貼り、表の革を吊り込みます。こうすることでフォルムがすっきりします。

靴は足に合っていてはじめて道具としての本来の機能を果たします。
そして、同時に、美観を求められるのもまた無視できない事実です。
そのどちらが欠けてもお客さんは決して満足してくれません。
アンダンテでは、まず足合わせを優先します。それによるフォルムの妥協はいたしかたないと考えます。ただ、その妥協点をカバーすべく形の錯覚を利用し、デザインを工夫し、ディテールにこだわり、最終的に愛着を持って履いて頂けるよう配慮を怠らないことが肝要だとも考えています。
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足を計測する方法の一つにフットプリントがあります。
アナログな作りですが、かなり重宝します。
足の輪郭を写しとる精度は少し改良の余地がありますが、土踏まずの有る無し、肉付きの感じ、足裏のタコやまめ、局部的な骨の当たりなど、その足の特徴が青いインクを介して声高らかに訴えかけてきます。

この情報は木型に反映されたり、靴の素材の選択に役立ったりします。そうして作られる靴の履き心地がどんなものなのか、それは体験者のみ知るところのものとなるのです。
身につけるものでここまで神経を使うものもそうはないと思いますし、また、フルオーダーメイドであることが、その意図を最大限有効にしているわけです。

まだまだ世間的にフルオーダー靴の認知度は低く、特に日本は靴後進国といわれています。
我々、知っている人間が伝えなければ、いつまでも浸透しません。常に発信し続け、理解を促し、少しずつでもこうした物選び、物作りの意識が拡がっていくことを願っています。

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