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アンダンテ靴工房は東急東横線自由が丘駅から徒歩10分、東急大井町線緑ヶ丘駅から徒歩5分、東急目黒線奥沢駅から徒歩7分のところにあります。
靴作り教室とオーダー靴の工房です。

タグ:吊り込み

それは突然の出来事でした。
Mさん、はじめての吊り込みに意気込みも充分で、快調に踵まわりをまとめあげ、その勢いのまま爪先を吊り込んでいこうとした矢先のこと。IMG_2077

「ふうう…ふん!」と、ワニ(吊り込み作業に使うペンチが変形したような道具)でグイングインひっぱりあげ、「お!いいぞ!その調子!」という私の掛け声を受けて今まさに靴の爪先の最先端を吊り込まんと「おいや!」気合いを入れたその刹那、「ばり。」という乾いた音とともにワニの先端が革を貫き、勢いあまって「ばりりりびりりー!」と革が裂けていくではありませんか。Mさん、革を突き破ったワニの先端をしばし無言で眺めた後、窓外の景色を遠くに見やり、「ああ、ここまでの道のり…革を裁断したり、慣れない色んな道具を使ってあれやこれやとやったあの時間…、そうよ、あたし、ミシンだって必死に頑張ったわ…!ああ、でももうこれで何もかも終わりなのね…そう、お・わ・り…ジ・エンド。フフ…終わったのよ、私は…。なんてこった…」といった思いを走馬灯のように巡らせたことでしょう。

実は吊り込み時に革が裂けるのはたまにあることです。ほとんどの場合、修復可能です。
吊り込む時にワニでつかんでいる所は吊り込みしろという靴の底面に回り込む範囲なので、破れていても実用に問題はありません。もちろん見た目にもまったく影響なしです。
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今回は派手に裂けたので補強用テープで裏貼りして、さらに傷口を縫うように補修しました。これで、また吊り込みOKです。Mさん、心配ご無用、これからも思い切って吊り込みましょう!

 

IMG_2067吊り込み。靴の製作工程の中でも特に技術が必要で、特に靴を作っていると実感できる作業ではないでしょうか。ここにきて、それまで平べったくペラペラとした靴の展開図のような、よく分からない形の革が、突如、靴に化けます。
製作工程としても山場を迎えたといってよく、これを乗り越えると、あとはシャンクを付けて、本底付けて、ヒール付けてと、一気にゴールへ向かいます。

吊り込みは、初めての生徒さんにはちょっと難しいかもしれませんが、ひーひー言いながら、それでも最終的にはなんとか出来るものです。 IMG_2073



 

IMG_1837ここで吊り込みをします。

吊り込み専用のスペース。一畳にも満たないコンパクトさですが、あるとないとで大きな違いです。
 

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