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靴作り教室とオーダー靴の工房です。

タグ:ポストミシン



教室で使っているセイコーのポストミシンには、自動糸切りという便利な機能がついているのですが、最近、糸が綺麗に切れなくなってきていましたので、ミシン屋さんに来ていただき、調整していただきました。別に糸くらい手動で切れば良いのですが、自動で切るよって言ってるくせに切ってくれないのって、ちょっとストレスだったりするんです。
思えば、このミシンを購入してはや6年、一度もメンテナンスらしいことをせずに使い続けてきましたので、ここらで一度診てもらうことに。
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各部の点検、調整していただきました。これでまたしばらく頑張ってもらいましょう。
もちろん糸切りもバッチリです。

趣味の生徒さんの初めての靴作りにおいて、最難関となるのは間違いなくミシンでしょう。
もちろん、型紙や吊り込みのほうが、作業としては複雑だし、 初めてやって出来るものではないですが、型紙や吊り込みはこちらから救いの手を差し伸べられるのです。
ミシンは生徒さん個人のちからでなんとかしないといけないので大変なのです。 
だからといって、あきらめてほしくないので、いいミシンを導入して、生徒さんにもある程度の練習をしてもらっています。
趣味といいながらでも、ちゃんと自慢できるくらいのものを作ってほしいのです。

ずっとそう思っていたのに、ひとつすっかり忘れていたことがありました。
ミシンを買った時、サービスで付けてくれていたガイドです。
今日は生徒さんのミシン作業の日で、ハギレで練習してもらうもなかなか思うように縫えない中、そういえばこういう時のため用のガイドがあったと思い出し、早速使ってみたところ、こんなに一気に教える側と教わる側の差が縮んで良いものなのかと不安になるくらいきれいに一定の幅で縫えて、今までの私の苦労は一体なんだったんだろうと思ってしまうほど、生徒さんは意気揚々としはじめ、終始笑顔が絶えることなく、「我、ミシンの極意、得たり。」といった風情をかもしだし、私はもはや下糸交換と糸調子を見るだけのお手伝いと化したかのような授業になりました。
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針の右側から伸びているのがガイドです。
使わない時は折り畳めるようになってます。
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古いパフです。

ミシンを踏み始めて間もない頃、いくら練習に練習を重ねても、安定した綺麗な縫い目が出来なくて、こんなに毎回、毎足、息を止めて縫うこの感じで製甲に臨まないといけないのかと思うと、ひどく気が重くなったものでした。
ミシンを購入するにあたり、当初は腕ミシンで検討していて、ミシン屋さんにもそのつもりでお願いしていたのですが、偶然にも予定していた腕ミシンと同時に、パフのポストミシンが入荷されたので、一度試してみないかということになったのです。

「パフ」というドイツのメーカーが世界的なミシンのトップメーカーであることを知ったのは、購入を決めた後のことで、国産のミシンメーカーはパフのミシンをこぞってお手本にしたとか、(前回記事のセイコーのミシンもパフの同機構のものをお手本にしたらしい。)新品の値段は国産の倍ほどしていたとか。それが本当かどうかは分からないけれど、そう聞いてもなんら不思議に思わないほど、このミシンのすごさは初めて踏んだ瞬間から伝わってきました。

前回のセイコーのミシンのように上にも送りがついているわけではないので、革の段差を乗り越えていく力や数枚重ね合わせた場合のずれの無さなどはセイコーに及びませんが、スピードに慣れさえすれば、平坦なものを縫う時のなめらかさ、カーブを思いのままに縫っていく感じはこのミシンの方が上です。

中古のミシンは一期一会の出会いです。 このミシンを使うようになって、いつしか私は製甲が好きになっていました。
 私にとって、もはやかけがえのない相棒なのです。

IMG_1844セイコーの上下車輪総合送り、自動糸切り機能付き。モーターは三菱サーボモーターの新品です。

一般的な革用ミシンは腕ミシンにせよポストミシンにせよ、縫い合わせる対象物の下から波板状の部品が、ちょうどボートのパドルで水をかく動きのように、わずかな上下運動を伴いながら前後に動き、対象物を奥へ奥へと送ってゆく構造なのですが、このわずかな上下運動に慣れるまでにかなり時間がかかりますし、送っては戻り送っては戻りを繰り返す、この限りなく連続に近い断続運動を通して、カーブを思いのままに縫いあげるには、ある程度の訓練が必要になってきます。

ミシンに触れる機会が4〜5ヶ月に一度の趣味コースの生徒さんが、ミシンを操ることに慣れるのは、ほとんど不可能に近く、革を縫う、というやり直しのきかない作業を前にして不安と戦い、それでも理想の靴の姿を思い描いて、気合い一発、ミシンの前に座り、深呼吸の後、一針入魂、ペダルを踏み込んではみるものの、およそ5秒を待たずして、絶叫マシンにライドオンしているかのような奇声を終始連発した挙げ句、縫いあげられたその折れ線グラフのごときステッチワークを震える手で持ちながら、しみじみと眺め、うなだれ、意気消沈、意気沮喪、戦意喪失していく後ろ姿を見ないで済むようにと選んだのが、このミシンです。

上下の送りが回転運動によって常に対象物を捉え、奥へと送りながら、縫い込む針さえも前後に動きながら運針するという構造と、モーターの超低速設定によって、初めてミシンを扱う方でもかなり綺麗に縫うことができます。生徒さん目線で見て、もうこれ以上のミシンはないのではないでしょうか。
実際、生徒さんたちが使ってみたところ、やはりこの選択は正解でした。

靴底圧着機と共に浅草のシューズマシンセンターで購入。社長さんは一見ぶっきらぼうな感じですが、わざわざここまで運んで下さって、とても丁寧にレクチャーして下さいました。
付属品も色々と付けていただき、本当に感謝しています。ありがとうございました。



 

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