以前、マシン紹介で登場したフォーチュナーの革漉き機。
その性能の程を少し紹介しようと思います。
手作り靴で主に使用するのはステアハイドという去勢されたオスの成牛の革です。クロムなめしされたステアハイドは、しっかりしたコシを保ちながらしなやかで、とても扱い易く、革漉き機にかけた時でも、ほぼ思い通りの加減で漉くことができます。ところが、豚革の厚みが充分にないものや、キメが荒いもの、羊革などの柔らか過ぎるものになると、なかなか思い通りの加減で漉くことができません。厚みがなかったり、柔らかすぎるものは漉き機の刃が食い込みにくいのです。逃げてしまうのです。
刃を良く研いで臨んでも、やはり限界があります。とくに、リトライは至難です。つまり、一度漉いたものの厚みが気に入らず、あともう少しだけ薄くしたくてセッティングを変え、もう一度漉き機にかけても、その願いはかないません。そういうものだと諦めていました。この漉き機に、豚のワキの下を2度通すまでは。
ドイツ製のクソ重たいこいつの、刃が研ぎたての時、まず、革を通した時に通常感じる「漉かれている感」が無いことに驚かされます。刃が回る「さー」という音とモーターの「うー」という音だけを静かに発しながら、どんな革が相手でも淡々と期待以上の仕事をこなし、柔らかい革でのリトライという無理難題でも、黙々と結果をだすその姿は、真っ黒なボディカラーと相まって、まさにこれぞドイツ製、精巧かつ質実剛健、実直で緻密で、繊細かつ力強く、そしてえーあとなんだ、とにかく、毎回漉き作業が面白いのです。
漉けるってこんなにも気持ちがいいものなのかと感動すら覚えますよ。