andante_jiyugaokaのblog

アンダンテ靴工房は東急東横線自由が丘駅から徒歩10分、東急大井町線緑ヶ丘駅から徒歩5分、東急目黒線奥沢駅から徒歩7分のところにあります。
靴作り教室とオーダー靴の工房です。

タグ:ドイツ製


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以前、マシン紹介で登場したフォーチュナーの革漉き機。
その性能の程を少し紹介しようと思います。

手作り靴で主に使用するのはステアハイドという去勢されたオスの成牛の革です。クロムなめしされたステアハイドは、しっかりしたコシを保ちながらしなやかで、とても扱い易く、革漉き機にかけた時でも、ほぼ思い通りの加減で漉くことができます。ところが、豚革の厚みが充分にないものや、キメが荒いもの、羊革などの柔らか過ぎるものになると、なかなか思い通りの加減で漉くことができません。厚みがなかったり、柔らかすぎるものは漉き機の刃が食い込みにくいのです。逃げてしまうのです。

刃を良く研いで臨んでも、やはり限界があります。とくに、リトライは至難です。つまり、一度漉いたものの厚みが気に入らず、あともう少しだけ薄くしたくてセッティングを変え、もう一度漉き機にかけても、その願いはかないません。そういうものだと諦めていました。この漉き機に、豚のワキの下を2度通すまでは。

IMG_1908ドイツ製のクソ重たいこいつの、刃が研ぎたての時、まず、革を通した時に通常感じる「漉かれている感」が無いことに驚かされます。刃が回る「さー」という音とモーターの「うー」という音だけを静かに発しながら、どんな革が相手でも淡々と期待以上の仕事をこなし、柔らかい革でのリトライという無理難題でも、黙々と結果をだすその姿は、真っ黒なボディカラーと相まって、まさにこれぞドイツ製、精巧かつ質実剛健、実直で緻密で、繊細かつ力強く、そしてえーあとなんだ、とにかく、毎回漉き作業が面白いのです。

漉けるってこんなにも気持ちがいいものなのかと感動すら覚えますよ。






 

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古いパフです。

ミシンを踏み始めて間もない頃、いくら練習に練習を重ねても、安定した綺麗な縫い目が出来なくて、こんなに毎回、毎足、息を止めて縫うこの感じで製甲に臨まないといけないのかと思うと、ひどく気が重くなったものでした。
ミシンを購入するにあたり、当初は腕ミシンで検討していて、ミシン屋さんにもそのつもりでお願いしていたのですが、偶然にも予定していた腕ミシンと同時に、パフのポストミシンが入荷されたので、一度試してみないかということになったのです。

「パフ」というドイツのメーカーが世界的なミシンのトップメーカーであることを知ったのは、購入を決めた後のことで、国産のミシンメーカーはパフのミシンをこぞってお手本にしたとか、(前回記事のセイコーのミシンもパフの同機構のものをお手本にしたらしい。)新品の値段は国産の倍ほどしていたとか。それが本当かどうかは分からないけれど、そう聞いてもなんら不思議に思わないほど、このミシンのすごさは初めて踏んだ瞬間から伝わってきました。

前回のセイコーのミシンのように上にも送りがついているわけではないので、革の段差を乗り越えていく力や数枚重ね合わせた場合のずれの無さなどはセイコーに及びませんが、スピードに慣れさえすれば、平坦なものを縫う時のなめらかさ、カーブを思いのままに縫っていく感じはこのミシンの方が上です。

中古のミシンは一期一会の出会いです。 このミシンを使うようになって、いつしか私は製甲が好きになっていました。
 私にとって、もはやかけがえのない相棒なのです。

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