SDIM0367人の親切はいつまでも覚えていたいものです。

物件が決まってから3ヶ月経った今もそう思わせてくれるほど、この不動産屋のUさんは親切でした。

まず、仕事とはいえ、閉店時間を過ぎてからの対応に2時間近くも時間を割いてくれた事。
手作り靴の工房兼住居を借りたいという、こちらの要望を的確に捉えて、音の問題、人の出入りの問題、保証の問題、その他、内装、看板、電力、といった諸々の条件をクリアーできるよう、尽力下さった事。
そして、この物件をなんとか全ての条件を満たして、借りることができそうになった時、まるで自分のことのように嬉しそうだった事。
それら全ての対応が、今までの同職の方とは違っていました。

物件までの道中、話は物件のことだけにとどまらず、私が靴工房を立ち上げようとするに至るまでの経緯に始まり、以前、Uさん自身が物作りの仕事をされていたことがあって、その頃の充実していた話だとか、ちょうど今、Uさんの弟さんが音楽の世界に飛び込んで一心不乱に打ち込んでいる様子を見て、羨ましく感じながら応援しているというような話など、どれも見通しの利かない中で、ただ純粋に「それをやりたい。」という気持ち一つを拠り所にのびのびと奮闘することの楽しさが感じられるものばかりで、そういった話を聞いていると、そうばかりもしていられないと思いながらも、たまらなく爽快な気分になるのです。
あれから3ヶ月、Uさんは今、充実しているだろうか。緑道を行く中でふと見せた寂しげな表情が今も思い出される。

こうして、長かった物件探しは無事、幕を閉じ、現在へと至るのでした。